外国人就労の受け入れ拡大 共生政策も同時に議論を(「毎日新聞 社説」)


  政府が「骨太の方針」の原案で、外国人就労の受け入れ拡大を打ち出した。原則として認めてこなかった単純労働にも門戸を開くもので、実質的な政策転換につながる。


  政府案によると、受け入れ対象は人手不足が深刻になっている建設や農業、介護などの5業種。2019年4月に新たな在留資格を設け、25年までに50万人超の就業を目指す。

  政策転換の背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力不足だ。高齢者や女性を含む「1億総活躍」、ロボット導入による省力化などでも賄いきれないと判断したのだろう。

  外国人労働者の拡大は世界的な動きであり、経済成長のためにも欠かせない。人口減少が進む日本で検討していくことは当然だ。

  ただし、それによって増加する外国人労働者に国内での共生を促す政策は見当たらない。

  人手不足解消という喫緊の課題にばかり目が行き、働く外国人の生活を守る視点が欠けているように思える。労働力の穴埋めと考えるだけでは、将来に禍根を残すことになりかねない。

  外国人受け入れの先例である技能実習制度では、賃金不払いや長時間労働などが問題化している。その二の舞いとしてはならない。

  優れた外国人材の獲得は中国や韓国、タイなども進めている。劣悪な条件を強いるようでは、獲得競争で後れを取りかねない。賃金などの労働条件はもちろん、社会保障などを含めた環境の整備が求められる。

  新制度について政府は「移民政策とは異なる」と強調している。確かに新制度による滞在期間は原則5年で、帰国を前提にしている。

  しかし、日本語や専門分野の試験に合格すれば期間が撤廃され、家族の帯同も認められる可能性がある。そうなれば「移民」との境界は、一段とあいまいになる。

  外国人の増加を巡っては、国民の間で治安悪化の懸念など不安が根強いことも否定できない。だからといって排外的な考えを優先するのは好ましくない。

  目指すべきは、外国人労働者が地域の人々と交流し、共に生活を営む社会であろう。そのためには、官民で就労受け入れを巡る議論を深める必要がある。


毎日新聞2018年6月7日 東京朝刊)


 急ピッチで進む少子化・人口減少社会を前に外国人労働者の導入を推進せざるをえないことを政府は認めたようです。と同時に、少子化対策を十分に行わなかった失策も言外に認めたようなものです。
 単純労働は社会を支えるのに不可欠なものです。その労働力が不足しているということは、社会・国家が成り立たなくなってきていることを示しています。その役割を担う外国人を迎えるのであれば、日本人労働者と同等の社会保障外国人労働者の子女に対する教育保障は最低限とるべき政策です。しかし、政府は移民政策ではないと力説しています。その背後には日本の大企業経営陣の「安価な労働力は欲しいが、企業の福利厚生は法定も含めて除外したい」という意向を受けているように考えられます。誤解を恐れず言えば、日本の企業と政府は外国人労働者を安価な労働力としてこき使い、最後は使い捨てにしたいということでしょう。このまま、移民政策を否定している政府に外国人労働者の導入を促進させれば、10年後には貧困と外国人差別が複雑に絡まり合った社会問題が持ちあがってくることは必至です。
 上記社説で≪外国人の増加を巡っては、国民の間で治安悪化の懸念など不安が根強いことも否定できない≫と書かれていますが、恐らく外国人による犯罪の横行のことを示唆しているのでしょう。最賃を下回る賃金しか支給しなかったり、パワハラ精神疾患や退職に追い込み生活に行き詰まれば、外国人に限らず犯罪を犯すことは容易に想像がつくことです。外国人の犯罪を予防するには、安定した就労と企業の福利厚生を保障すること、また子女の教育保障をきちんと施策としてやることです。外国人労働者を低賃金でこき使えると考えて日本の企業経営陣の都合のいいように導入するなら、明治期の農村出身の女工に対して行った搾り取りたいだけ搾り取り病気になれば使い捨てることと同じようなことをすることになるでしょう。
 政府は外国人労働者を本格的に導入することを考えるのなら、生活の基盤を保障することも同時に考慮すべきです。そのためにも、今一度、企業の利益を優先するのではなく、労働者保護という観点で雇用政策を見直し、外国人労働者にも日本人と同等の保護が受けられるようにしていくべきではないでしょうか。