ホームレス支援 ぬくもりのある社会で(「中日新聞」社説)

 極寒の路上でホームレスの人が凍えている。病気や障害があり、福祉につながっているべき人が支援から取り残されてしまっている。当事者にかかわるNPOなどとともに、行政は支援に動きだせ。

 東京都心にも記録的大雪が降った十四日、上野公園では七十代の女性が寒さに震えていた。肩からコートをかけ、夏のズボンに運動靴。夜は公共施設のひさしの下で毛布にくるまって過ごす。施設の開館中は通報されるのが怖くて、公園や周辺をあてもなく歩く。

 上野駅近くの歩道橋下では年配の男女が傘をさし、横なぐりの雪を防ごうとしていた。生活道具を入れた、いくつものかばんが足元でぬれている。雪や風をしのごうと地下通路に身を寄せ、その通路も閉まった夜には、凍えないよう一晩中歩いていた人もいた。

 二〇〇二年のホームレス自立支援法による施策もあり、ホームレスは減少したとされる。厚生労働省の調査では、全国のホームレスの数は約二万五千人を数えた十年前に比べ、一三年現在で約八千三百人と三分の一になった。だが、支援者はその数が実態を映しておらず、不況の中で増え、実際には倍以上いるともみている。

 実態をつかめないのは、調査が目視を頼りにしているからだ。昼間に町中を見回るだけで、テントや段ボールの中を確認したり、本人への聞き取りはしていない。同じ人の重複もある。仕事に出ていたり、ネットカフェで夜を過ごす人は数えられていない。

 支援が以前よりも難しく、深刻になっている。やり直せる力のある人は就労支援などを受けて路上生活を抜け出していくが、知的障害や精神疾患、依存症などを抱えた人に一律の支援策は合わず、再び路上に戻ってしまった人が少なくない。

 凍(い)てつく路上に放置しては命取りになるのに、ホームレス排除の動きがあちこちで起きている。昨年末には、夜間施錠の決まった渋谷区の宮下公園でホームレスが追い出され、炊き出しをする民間団体が閉め出された。

 食事や休息の受け皿も用意せず、民間の緊急活動をただ排除するやり方は弱い人を追い詰めるだけだ。二〇年の東京五輪に向け、排除の圧力は強まる懸念があるが、行政は支援ノウハウを持つ人々と両輪であるべきだ。

 日本の自殺者は年間約三万人にも上る。孤立させてはならない。ぬくもりのある社会でありたい。


中日新聞  2014年2月24日)



 上記の社説からホームレス問題の深刻さが伝わってきます。住居がなく大雪が降り積もる中凍死と隣り合わせの状態で生きている人びとが多数、東京の都心に存在します。これらの人びとをどう支援するかということは、先の都知事選でも焦点になったという話しはまったく聞かれませんでした。住居がないため選挙権を持たないが故に政治ないし行政上の課題として取り上げられることもなく、常にホームレスは自己責任の問題として片づけられてきたことがいつまでも根本的な解決を先送りしてきた原因と考えられます。

 上記、社説では、行政は東京五輪を前に路上生活者を公園などの公共施設から排除するような措置がとられつつあることを指摘しています。本来ホームレス問題は、低額ないし無償で入居できる公共住宅が整備されてこなかった日本の住宅政策の貧しさが招いたものです。五輪に対しては競技場や関連する公共施設の整備が進められる一方で居場所のないホームレスに対する人間的な施策は何一つなく公園や公共施設から排除する。排除されたホームレスを待ち受けているのは貧困ビジネスという名のクモの巣か路上死というところでしょうか。生命を脅かされている人々の安全を確保するより五輪の開催を優先しようとするのが今の日本のソーシャルポリシーの現状です。

 何か間違ってはないでしょうか。